ラクトフェリン研究ヒストリー

感染予防の観点から研究がスタート

2006年に、床ずれによる感染症予防を目的としてラクトフェリンを用いたところ高い効果を認め、皮膚科学へ応用するきっかけとなりました。
飲むラクトフェリンで注目を集める中、肌に塗るラクトフェリンの優れた力を追求、発見。エイジングケア効果に着目し、肌のメカニズムとデータに基づいたスキンケア開発を行っています。

2011年からは、ラクトフェリン研究所の世界的権威者Dr.ロネダールを中心に学識と伝統を誇るカルフォルニア大学デイビス校とのラクトフェリンスキンケアの共同研究がスタート。
共同活動の中でラクトフェリンの効果実証を進め、新たな可能性を探求しつづけています。

2008年

第3回ラクトフェリン学会フォーラム賞受賞研究
ラクトフェリンで傷ついた肌細胞を修復する効果を発表

肌細胞で作った膜を引っ掻いて傷口を作った後にラクトフェリンを作用させると、傷口を塞ぐように肌細胞が活性化されることが発見されました。

この結果はラクトフェリンが細胞にあるラクトフェリンレセプター(受容体)と結合し、肌ダメージを修復するシグナルが伝達していることを示しています。

ラクトフェリンの細胞修復効果

ラクトフェリンレセプターの働き

レセプターとは特定の成分を受け入れる細胞についた鍵穴のような存在。
ラクトフェリンを肌に塗ると細胞のラクトフェリンレセプターと特異的に結合し、新陳代謝が活性化され、傷が早く治るのです。

※皮膚線維芽細胞:肌の真皮にある細胞。肌のハリや弾力のもととなるコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンをつくる源となる細胞です。

※日本ラクトフェリン学会 第3回学術集会にて発表

2010年

肌に塗るラクトフェリンでハリ・弾力成分が増加

線維芽細胞が活発に働いている間はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の新陳代謝がスムーズに行われ、ハリと弾力のある瑞々しい肌を保っています。
線維芽細胞が衰えて働かなくなると、新陳代謝は鈍り、コラーゲンやエラスチンが変性することで弾力を失い、ヒアルロン酸が失われることで水分が減少していきます。
その結果、真皮組織は緩んだ状態となり、皮膚にシワやタルミが表れるのです。つまり、若々しい肌を保つには、真皮の中で活発に働きまわる線維芽細胞が必要というわけです。

ラクトフェリン溶液を線維芽細胞へ作用させたところ、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンといった美肌成分の増加が確認できました。

ラクトフェリンの細胞修復効果

服用による肌のシワ改善効果、
水分量・キメ・バリア機能向上効果
を発表

被験者20名(男性9名、女性11名)にラクトフェリンを含む腸溶性の錠剤を飲むチームと、含まない錠剤を飲むチームに分かれて、3カ月間の服用試験を行い、手と顔の肌状態の測定を1か月ごとに実施しました。試験開始2カ月後から肌の水分量、キメ、なめらかさが増し、バリア機能が向上、シワが浅くなることが認められました。それだけでなく、疲れやすさ、寝つきのよさなど、体調面でもプラスの効果があることがアンケートの聞き取りによってわかりました。

顔の皮膚水分量
顔の皮バリア性
顔のキメ
顔のシワ

試験錠剤摂取前の測定値に対する1ヵ月ごとの変化量を3ヶ月後まで算出し、ラクトフェリンを含む錠剤を摂取した群(●)ラクトフェリンを含まない錠剤を摂取した群(○)について平均値±標準誤差で示した。
2群の平均値をt検定で比較し、**p<0.01を有意差有りと判定し、p値を示した。
0.05<P<0.1の項目についてもp値を記載した。

※日本ラクトフェリン学会 第4回学術集会にて発表

2011年

サラヤ独自成分「SOFORO/ソフォロ※1」で
ラクトフェリンの肌浸透が約2倍

パーム油と糖をもとに、天然酵母がつくりだす天然の経皮吸収促進成分ソホロースリピッド(SL)。このSLはラクトフェリンをカプセル状に包み込んで肌の奥、真皮層まで運んでくれることが実証されました。1%ラクトフェリン液、1%ラクトフェリン+SL液で皮膚への浸透量を比較したところ、SLありの方が2倍程度の浸透量を示しました。(ヒトの皮膚に限りなく近い3次元培養皮膚を使って実験)
SLはラクトフェリンを効率よく、真皮層まで届け、ラクトフェリンの効果を発揮させてくれる強い味方であるというわけです。

※1 一般名:ソホロースリピッド

※第10回国際ラクトフェリン学会にて発表

2012年

ラクトフェリン配合のジェルでシワが平均約40%改善

40~50代の女性11名にラクトフェリン0.5%配合ジェル化粧品を1か月間、朝晩使用してもらい、使用前後の顔の肌状態の比較測定を行いました。その結果、肌の水分量・バリア機能が向上、平均でシワが約40%改善されました。
これによって、ラクトフェリン配合ジェルの年齢肌への高いエイジングケア効果が実証されました。

顔の皮膚水分量
顔の皮バリア性
顔のキメ

図 1ヵ月使用前後の皮膚状態変化(n=11,*p<0.05,***p<0.001)
水分蒸発量、角層水分量およびシワの深さについて11名の平均数値±標準誤差で示した。
2群の平均値をt検定で比較し、有意差判定した。

※日本ラクトフェリン学会 第5回学術集会にて発表

2013年

遺伝子レベルでのアンチエイジングの可能性を発表

ラクトフェリンが真皮の繊維芽細胞の中に取り込まれることを発表しました。真皮の繊維芽細胞は、肌のハリ・弾力を保つために重要なコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチンをつくりだしている細胞です。加齢などにより繊維芽細胞の働きが衰えると、こうしたハリ・弾力成分の産生力が落ち、シワやたるみなどの原因となります。
この研究によりラクトフェリンは、繊維芽細胞の内部にとりこまれて、遺伝子発現を促し、細胞を活性化することが示唆されました。

※第11回国際ラクトフェリン学会にて発表

2014年

ビタミンCの2倍以上の美白効果
少量でもトラネキサム酸に匹敵する美白効果があることを発表

ラクトフェリンをメラニン生成細胞に作用させると、メラニンの生成を抑制することを発表しました。この効果はビタミンCの美白効果を上回りました。

メラニン生成細胞の中にはメラニンの生成をコントロールするMITFという因子があり、この因子が増えるとメラニンの生成量が高まります。
ラクトフェリンはこの因子の生成を妨げる効果があるので、メラニンの生成量も低下させていると考えられます。
また、0.5%濃度のラクトフェリンが、美白成分として有名なトラネキサム酸の有効濃度2%と同程度のメラニン生成抑制効果を示しました。(ヒトの皮膚に限りなく近い3次元培養皮膚を使って実験)

ラクトフェリンを実証濃度で配合した化粧品には美白化粧品に匹敵する美白効果があると証明されたと言えます。

※日本ラクトフェリン学会 第6回学術集会にて発表

2015年

既にできてしまったメラニン生成因子を分解する効果を発表

ラクトフェリンはメラニン生成因子を減らす効果を持ちますが、この効果は新たな因子が作られるのを抑えるという働きだけでなく、すでに存在するメラニン生成因子の分解を促すという働きもあることが確認されました。
因子の分解を促進するまでの分子機構を解明し、2014年の美白の研究成果の続報として発表を行いました。

※第12回国際ラクトフェリン会議にて発表

2016年

ハリ・弾力成分"エラスチン"の生成を高めて、
傷痕が残りにくい肌

ラクトフェリンには肌の弾力成分である"エラスチン"の産生量を高める効果があることが既に発表されていましたが、今回はそのメカニズムを解明することに成功しました。
エラスチンの産生力の高い肌は、傷がついた場合も治りやすく、傷痕が残りにくくなります。この発表により、傷ついた肌を修復するためのラクトフェリンを使った創薬への可能性が示されました。

※日本ラクトフェリン学会 第7回学術集会にて発表

第66回工業技術賞受賞

高純度に精製したソホロースリピッドを初めて基礎化粧品に配合し、ソホロースリピッドによってラクトフェリンの皮膚浸透が高められることを示し、オールインワン化粧品としての商品化に成功。
ラクトフェリンは特に化粧品基材成分との相性が悪く配合が困難でしたが、ラクトフェリンの皮膚細胞に対する代謝促進活性を損なわずに配合する技術を完成させたことで、高い評価をいただき授賞しました。

ラクトフェリン研究所 所長 鈴木靖志 プロフィール

学歴・職歴

1992年3月
京都大学農学部農学科卒業(果樹園芸学)
1992年4月〜1995年8月
大手食品製造販売会社 研究員
1995年9月〜2001年6月
カリフォルニア大学デービス校
農環境学部栄養学科 博士課程修了(栄養学・消化器生理学)
2001年7月〜2002年8月
カリフォルニア大学デービス校 博士研究員
2002年9月〜現在
サラヤ株式会社バイオケミカル研究所
2013年11月よりバイオケミカル研究所 開発部 部長
2009年4月〜現在
佐伯栄養専門学校 客員教授
2011年1月〜現在
サラヤラクトフェリン研究所 所長
2014年2月〜現在
中国食品発酵工業研究院 客員研究員

所属学会

  • 日本農芸化学会
  • 日本栄養・食糧学会
  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
  • 日本栄養改善学会日本ラクトフェリン学会
  • 日本口腔科学会日本食品科学工学会

Publications

  1. Suzuki, Y. A., Shin, K., & Lönnerdal, B. (2001) Molecular cloning and functional expression of a human fetal intestinal lactoferrin receptor. Biochemistry 40, 15771-15779.
  2. Suzuki, Y. A. & Lönnerdal, B. (2002) Characterization of mammalian receptors for lactoferrin. Biochem. Cell Biol. 80, 75-80.
  3. Nandi, S., Suzuki, Y. A, Huang, J., Yalda, D., Pham, P., Wu, L., Bartley, G., Huang, N., & Lönnerdal, B. (2002) Expression of human lactoferrin in transgenic rice grains for the application in infant formula. Plant Sci. 163, 713-722.
  4. Suzuki Y. A., Kelleher S. L., Yalda D., Wu L., Huang J., Huang N., and Lönnerdal B. (2003) Expression, characterization, and biologic activity of recombinant human lactoferrin in rice. J. Pediatr. Gastroenterol. Nutr. 36, 190-199.
  5. Suzuki Y. A., and Lönnerdal B. (2004) Baculovirus expression of mouse lactoferrin receptor and tissue distribution in the mouse. Biometals. 17, 301-309.
  6. Ashida K., Sasaki H., Suzuki Y. A., and Lönnerdal B. (2004) Cellular internalization of lactoferrin in intestinal epithelial cells. Biometals. 17, 311-315.
  7. Suzuki Y. A., Lopez V., and Lönnerdal B. (2005) Mammalian lactoferrin receptors: structure and function. Cell Mol. Life Sci. 62, 2560-2575.
  8. Lopez V., Suzuki Y. A., and Lönnerdal B. (2006) Ontogenic changes in lactoferrin receptor and DMT1 in mouse small intestine: implications for iron absorption during early life. Biochem. Cell Biol. 84, 337-344.
  9. Suzuki Y. A., and Lönnerdal B. (2006) 小腸ラクトフェリン受容体を介したラクトフェリンの細胞内取り込み. FFI J. 211, 406-413.
  10. Suzuki Y. A., Wong H., Ashida K., Schryvers A. B., Lönnerdal B. (2008) The N1 domain of human lactoferrin is required for internalization by Caco-2 cells and targeting to the nucleus. Biochemistry 47, 10915-10920.
  11. Suzuki Y. A., Lönnerdal B. (2010) Lactoferrin: Strucutre, functions, and applications. Functional Food Reviews 2, 69-79.
  12. 井上奈々子、竜瑞之、吉田智、鈴木靖志 (2011) 腸溶性ラクトフェリンサプリメントの皮膚状態へ及ぼす作用、ラクトフェリン2011, 132-137
  13. Ishii N., Kobayashi T., Matsumiya K., Ryu M., Hirata Y., Matsumura Y., Suzuki Y. A. (2012) Transdermal administration of lactoferrin with sophorolipid. Biochem. Cell. Biol 90, 504-512
  14. 吉田智、薮ノ内真子、石井七瀬、竜瑞之、鈴木靖志 (2013) ウシ乳由来ラクトフェリン中のα-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリンの検出、ラクトフェリン2013、131-135
  15. 竜瑞之、石井七瀬、平田善彦、鈴木靖志 (2013) ラクトフェリンを配合した化粧品の使用による皮膚の評価、ラクトフェリン2013、55-59
  16. 石井七瀬、竜瑞之、平田善彦、鈴木靖志 (2013) 皮膚へのラクトフェリンの作用に及ぼすソホロリピッドの影響、ラクトフェリン2013、7-11
  17. Lönnerdal B., Suzuki Y. A. (2013), "Lactoferrin" In: Advanced Dairy Chemistry; Proteins 4th Ed., Fox P. F., McSweeny, P., Eds. pp295-315
  18. 鈴木靖志、石井七瀬、竜瑞之(2015) 皮膚外用剤としてのラクトフェリンの利用、ラクトフェリン2015、19-24
  19. 石井七瀬、薮ノ内真子、竜瑞之、鈴木靖志(2015) ラクトフェリンによるメラニン生成の抑制、ラクトフェリン2015、47-52