開発秘話
生ラクトフェリンの機能が活きた証である天然のピンク色を守りつつ、濃度を高めたい…。ブランドマネージャーと研究所メンバーが、ラクトフェリンを高濃度に配合した化粧品が誕生するまでの苦難の道のりと未来についてディスカッション!
ブランド立ち上げ
からの旗振り役
Lactoferrin Lab.事業責任者
代島裕世
難関のクリーム開発
に奮闘
研究メンバー
吉田亜紀子
平田所長ともに
ソホロを開発
研究メンバー
荒木道陽
生ラクトフェリンの機能が活きた証である天然のピンク色を守りつつ、濃度を高めたい…。ブランドマネージャーと研究所メンバーが、ラクトフェリンを高濃度に配合した化粧品が誕生するまでの苦難の道のりと未来についてディスカッション!
ブランド立ち上げ
からの旗振り役
Lactoferrin Lab.事業責任者
代島裕世
難関のクリーム開発
に奮闘
研究メンバー
吉田亜紀子
平田所長ともに
ソホロを開発
研究メンバー
荒木道陽
代島
ラクトフェリンによって肌の細胞が活性化するというのは、発表当時、専門学会を騒然とさせるほどの大発見だったことを覚えています。ラクトフェリンを配合すると、細胞が明らかに動くんだから。
荒木
遊走という現象ですね。確かにすごい。とはいえ皮膚の傷口をふさぐのに有効とされる目安は、ラクトフェリン0.5%配合と言われますから、研究ハードルもメチャクチャ高いです。0.5%って数字は一見、少なそうに思われてしまいそうですが…。
吉田
初乳に含まれているラクトフェリンは0.5~1%で、これが自然界最高ですから、0.5%配合は、かなりの高濃度です。
荒木
スキンケアアイテムの多くは加熱処理されていますが、ラクトフェリンは乳たんぱく質なので、熱を加えることができません。加熱せずに濃度を高めるのは難しい…。
代島
牛乳や卵に熱を加えると変わってしまうし、元には戻らない。それと同じ性質だから。
吉田
ラクトフェリンは立体的な構造をしていて、私たちの健康に欠かせない成分として知られる「鉄イオン」を抱きかかえています。熱を加えると、その「鉄イオン」に影響してしまう。
代島
赤い「鉄イオン」を抱きかかえているから、ラクトフェリンはあんなにきれいなピンク色をしている。牛乳に含まれるたんぱく質として初めて発見されたときには「赤色タンパク質 (レッド・プロテイン)」という名前がつけられたくらい。
吉田
ラクトフェリンを加熱処理すると、その大切な成分が失われてしまいます。ピンク色は、生ラクトフェリンの機能が活きているという証なんです。
代島
ラクトフェリンは化粧品に安定配合するには難しい成分だから、ジェルセラムを開発するときには沈殿して品質が安定しなかったり、天然のピンク色が壊れてしまったり…、研究開発の初期段階では何度も挫折しかかっている。
それでも「積み重ねてきた実証データをムダにしたくない」という研究者の強い気持ちが、困難を打ち負かしたということでしょうね。
研究者の強い気持ちが、
困難を打ち負かした
Lactoferrin Lab.事業責任者 代島裕世
代島
実用化にあたっては、安定配合の難しいラクトフェリンを、美肌効果の高い状態で皮膚細胞になじませる必要があった。ここは平田所長と荒木さんの出番だね。
荒木
そうですね。ラクトフェリンを皮膚に浸透※させるための成分として採用されたのが、100%植物由来の「浸透促進成分=ソホロ」です。ソホロには、水になじむ成分、油になじむ成分が混在しているので、ラクトフェリンとも皮膚ともなじみます。しかも100%植物由来ですから、肌にやさしい。ただし、ソホロを化粧品グレードの成分にするための高純度化は難関でした。
※角質層まで
吉田
純度がアップするほど、低刺激となり、肌へのやさしさもさらに高まるから、大きな目標になりますね。
荒木
はい。低刺激性は、スキンケアにとても大切です。純度を上げるためには、不純物を取り除いていくわけですが、実際には簡単ではありません。ソホロと他の副産物を分離させる技術の開発が難関でしたね。
代島
難関突破のかいあって、ソホロは今、あのiPS細胞の保存液にも活用されています。医療用分野でも大きな評価を受けているということは、ソホロの皮膚・肌へのやさしさ、低刺激性を証明しているね。
ソホロと他の副産物を分離
させる技術の開発が難関
研究メンバー 荒木道陽
代島
スキンケアアイテムはコンディションに大きく左右されるので、年齢、ライフスタイルの異なる多彩な方々のニーズをカバーするのも難しい。
吉田
そうなんですよ。そのため、スキンケアアイテムにはさまざまな成分が入っていますが、効果があるからといって何でも加えるわけにはいきません。
荒木
加えたら成分バランスが崩れて分離したり、すでに配合して問題なかった成分の濃度を高めただけで、安定しなくなって崩れてしまう場合も…。
代島
崩れるというのは、水分と油分が分離したりするってこと?
吉田
それもありますね。私が担当したクリームにはラクトフェリン1%配合をめざしたのですが、これは自然界での最高濃度です。濃度の高い成分を入れた途端、クリーム状だったのが一瞬で崩れたり、崩れなくても使用感が変わったり。あー、この濃度では無理なんだなとわかったら、次の配合で試験。これの繰りかえしです。配合バランス、入れる順序などの条件によっても違いますから、すべての組み合わせを試しました。
荒木
何百回と試してみることに…。
代島
うーん、いいものは加えたい、たくさん入れたい、でも、スキンケアアイテムとして成立させなくては…。
吉田
ベストなスキンケアアイテムに行きつくには、何通りもの組み合わせを1つ1つクリアして、その試行錯誤でベストな配合を見つけていくしかないと考えています。
荒木
本当に険しい道のり。すごくわかる。
何通りもの組み合わせから
ベストな配合を見つけていく
研究メンバー 吉田亜紀子
代島
ここからは何と、未来の開発秘話です。さきほどソホロがiPS細胞の保存液として使われているという話題が出たけれど、2021年秋からは再生医療にいかされますね。
荒木
はい。世界に通用するサラヤクオリティとして、さらにメイドインジャパンとしても、ソホロブランドは世界から期待されているのを感じます。各国の特許をとって、展開させたいですね。
代島
またラクトフェリンの効能は本当に高く、限りなく薬に近いと言われているけれど、創薬の可能性につながる?
荒木
研究そのものが感染予防から始まっているので、肌の常在菌、いわゆる肌フローラに働きかける可能性を解明し、ラクトフェリンによる肌バリア、保湿などを達成するのも目標の一つですね。
代島
ところでラクトフェリンの原料調達で再認識したのが、牛乳の素晴らしさです。牛乳の魅力を再検証してその価値を広め、酪農が持続可能となるように応援したい。これはユーザーの方々の信頼に応えることにもつながるはずです。
吉田
そうですね。人と環境、両面の健康を考えて研究開発するのは、サラヤの大きな魅力です。使用感を重視するあまり、環境を犠牲にするのでは、サラヤが貫いてきたポリシーとは異なってしまう。だから私も余計なものを入れない製法での研究開発をめざしています。それこそが、ユーザーの方々に自信をもってお届けし続けられるサラヤブランドなのかなと思います。